ピラティスはバレエにどんな効果があるの?


近年、多くのダンサーが、踊るための身体づくりの一環としてピラティスを取り入れています。欧米ではダンサーの教育やダンサーの活動において、ピラティスのその効果と重要性は1980年代から医学的・科学的に多く研究され、ピラティスは非常に多くのバレエ学校やバレエ・カンパニーでダンサーの身体を鍛える手助け、整える手助けとしてなくてはならないものとして重要な役割を担っているようです。科学的研究では、ダンサーにとってピラティスは、柔軟性、筋力(主に体幹の安定性・腹筋力)、ジャンプ力、バランス、姿勢の向上に効果があると報告されています。また、ケガ予防やリハビリとしても大いに活用されているようです。

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私自身も、10年ほど前からピラティスを始め、身体への集中がより深くなりコントロールしやすくなったことで、踊りの質が大きく変化したのを感じました。きっと、背骨や骨盤のアライメントを修正し、正しく動くことをピラティスで学んだことによって、身体が本来持っている能力を発揮できるようになったのではないか・・・と思っています。

ここでは、ピラティスエクササイズがバレエ(ダンス)を踊るのにどのような効果があるのか、より具体的にご紹介していきたいと思います。

ピラティスがバレエに及ぼす効果①〜腹筋群(主に腹横筋)の強化

バレエのレッスンの中でよく聞かれる言葉に「お腹を引き上げる」というものがあります。これは具体的には、お腹のどのような筋肉を指しているのでしょうか?

腹筋は大きく分けて3つあります。外側にある「腹直筋」と肋骨から骨盤にかけて走る「腹斜筋(外・内)」、そして内臓を支える「腹横筋」です。「腹横筋」は一番深層にあり胴体を安定させる役割を担っています。いわゆる身体の軸を支えているのが「腹横筋」です。バレエでお腹を引き上げてというときはこの「腹横筋」を指しています。筋肉の強化は腰や背骨に負担をかけないためにも大切です。特に普段からハイヒールをよく履く人や運動をしない人は身体のバランスが崩れ、筋力が衰えている可能性があります。正しい姿勢を保つために腹横筋や背筋、大殿筋がバランスよく鍛えられていなければいけません。特に体の深部にあって鍛えるのが難しいのが「腹横筋」なのです。

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ピラティスエクササイズは腹横筋を効果的に鍛えることができます。バレエでいうお腹を引き上げる動きができないという人はピラティスで腹横筋を鍛え、ぜひその効果を試してみてください。

 

ピラティスがバレエに及ぼす効果②〜正しい呼吸法

エクササイズといえば激しい動きをやたらと繰り返すきついイメージがあるかもしれません。しかし、ピラティスで重要視しているのが呼吸法です。呼吸運動には次のような利点があります。

・血液に酸素を送り込み、身体の細胞レベルに栄養を与える

・血液の循環を良くする

・心身を落ち着かせる

・集中力を増す

・運動時に適切な筋肉の動員を行う

・動作にリズムができる

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ピラティスで行われている呼吸は胸腔の水平方向の拡張を重視します。これを「側方呼吸」または「肋間式呼吸」と呼びます。ヨガでよくおこなわれている腹式呼吸は身体をリラックスさせる呼吸ですが、ピラティスの側方呼吸はある部分の筋肉を緊張させて交感神経の働きを活発にさせる呼吸です。特に、息を吸う際に腹部の収縮を促進・維持することを目的としています。つまり、腹壁を内側に引き寄せたまま側方呼吸をするのです。

実は、バレエの呼吸も横隔膜を伸縮して胸腔を広げるように行います。この側方呼吸によって緊張する筋肉の一つが先ほども出てきました腹横筋!腹横筋は内臓や骨盤周りを支える筋肉です。この腹横筋が鍛えられると、姿勢が整えられるだけでなく骨盤の位置も整えられると言われています。さらに腹横筋が鍛えられることで得られるうれしい効果がウエストのくびれです。憧れの細いウエストは腹横筋によって上半身が引き上げられている状態なのです。腹横筋は加齢によって緩んでしまいますから、定期的なエクササイズで腹横筋を鍛えて引き締まった上半身を手に入れたいですね!

 

ピラティスがバレエに及ぼす効果③〜体幹の安定

ピラティスの動きの基本は、筋肉を短く縮めることで鍛えるのではなく、負荷に対して筋肉を出来る限り縮めず長い状態を保ちコントロールしながらそのサポート力や筋持久力そして筋力を高めていきます。
同じく美的容姿を考えながらトレーニングをしなくてはならない女優やモデルがトレーニングとしてピラティスを取り入れるのもこの理由が大きいのではないでしょうか。
ピラティスの最大の特徴は、体幹の安定を築きその上で四肢を長くそして強く柔軟に鍛え、身体の様々な関節の可動域を広げと動きのコーディネーションを高めること。その特徴そのものがバレエの動きに求められる要素になります。

 

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体幹の安定に関して最も重要な筋肉は、「横隔膜」「腹横筋」「多裂筋」「骨盤底筋」です。

まずは「横隔膜」について。この「横隔膜」、呼吸運動の中心を担う大切な筋肉で(膜だから筋肉と思っていなかった方もいらっしゃると思いますが!!!)、息を吸うと横隔膜が下がり、胸腔が広くなって空気が肺の中に取り込まれ、反対に息を吐くと横隔膜が緩んで胸腔が小さくなり、空気が肺の外に押し出されます。ある研究では、呼吸時に横隔膜が最大限に動いている人ほど、体幹が安定し、脊柱への負担が軽いために腰痛などの症状がないことが示されています。したがって、体幹の安定と「横隔膜」の動きとは密接関連があることが示されています。

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また、「腹横筋」は先ほども出てきましたね。腹横筋は腹圧の発生に不可欠で、脊柱にかかる負荷を減らし脊柱を守ってくれる大切な要素となっています。「多裂筋」もまた、体幹の安定に関してとても重要な背部伸筋で、腰椎を安定させる働きがあります。さらに、もう一つ重要な筋肉が骨盤底筋です。この筋肉は腹横筋などと複合的に働くことが多く、コアを支え、安定させる際に非常に大きな役割を果たします。

ピラティスがバレエに及ぼす効果④〜柔軟性

ピラティスメソッドの大きな特徴の一つは、通常のエクササイズでは鍛えにくいところも、ピラティスによって細かく意識しながら動かし、鍛えることができ、結果、関節可動域が広がり体の柔軟性を高めると言われています。

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特に尾てい骨から頭蓋骨までを貫く脊椎周辺の筋肉と、骨盤周辺の筋肉の柔軟性を向上させることは、その運動能力だけでなく、体調そのものを整えるためにも有効とされています。この体の中心を走るラインとなる筋肉の筋力や柔軟性が増すと、バレエの美しい姿勢を維持しながら、より機能的に踊る事ができます。

特に注目されているピラティスエクササイズの一つに、背中の筋肉の強化があげられます。背中の筋肉はコアマッスルという、深層部の筋肉も関係しており、背中のしなやかな筋肉は、バレエの美しい所作を身につける上で不可欠なものです。

ピラティスは、一つ一つの小さな筋肉を意識しながらゆっくりと動かしていき、細かい筋肉を鍛えていきますから、徐々に背骨の周りの筋肉がより柔らかく細かく動くようになり、そのことによって、バレエのしなやかな背中の動きがつくられます。

そして、背中の筋力の柔軟性が増すことによって、骨盤周辺の筋肉も緩ませる事が出来、バレエダンサーに多い腰痛の改善や予防にも寄与します。背骨や骨盤、そしてその周辺の筋肉を意識しながら動くことができれば、動きの正確性も向上しますし、関節可動域も広がります。その結果、全体的に体の柔軟性が高まることに繋がるのです。

 

ピラティスがバレエに及ぼす効果⑤〜ボディコントロールによる正しいボディアライメントの発見

ピラティスでは、自らの身体を内観し、正しい姿勢すなわち「ニュートラルポジション」を見つけることが大切です。程よくリラックスしながら背骨と首が自然なアーチを描き、骨盤と筋肉のバランスがとれた状態です。姿勢がゆがむ原因は筋力不足。バレエでも「まっすぐ立ちましょう」という指導がおこなわれますが、そもそも、自分自身の「ニュートラルポジション」を正確に理解していなかったり、筋力が不足しているとまっすぐ立つということさえも困難です。自分の骨の正確な位置を知るとともに、筋肉がバランスよく発達していなければ綺麗に立つことはできません。ピラティスは筋力の不均衡も改善させると言われているエクササイズですから、身体のパーツを正しく動かすボディコントロールもピラティスによって学ぶことができます。ピラティスは正しく動くことの基本になるエクササイズであると言われるのはそのような理由によるものです。

骨盤のニュートラルポジションとは、骨盤両側の上前腸骨棘(ASIS)と恥骨結合部(PS)が同一水平面にあり、両方のASISが同一横断面にある骨盤のポジションのことです。images-4

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そして、正しい脊柱のポジションをニュートラルスパインと呼び、脊柱が自然なカーブになっている状態を示します。正しい骨盤と背骨のアライメント、すなわちニュートラルポジションを見つけるには、仰向けの状態で先に述下手境界点(骨盤両側の上前腸骨棘と恥骨結合部)が形成する三角形が同一の水平面上になるようにします。恥骨結合部が上前腸骨棘よりも高い位置にある場合は、骨盤が後傾(タック)になっている状態で、反対に、上前腸骨棘が恥骨結合部よりも高い場合は、骨盤が前傾(アーチ)になっていることがわかります。

ニュートラルポジションが理解できると、まず、バランスのとれた骨盤筋の発達を促進し、正しい筋肉の動員を行うことができます。また、石柱のニュートラルポジションを見つけることによって、機能的かつポジティブな動作パターンの効果を高めます。

私自身が、ピラティスエクササイズを取り入れたことで、より踊りやすく感じるようになったのは、こうした「ニュートラルポジション」の理解によって、より機能的な筋肉動員や関節の動きができるようになったからなのかもしれません!

まとめ

以上のように、ピラティスエクササイズがバレエダンサーの身体や動きに及ぼす効果には、腹横筋の強化、正しい呼吸法、体幹の安定、柔軟性の向上、ボディコントロールによる正しいボディアライメントの発見が挙げられ、これらのことが、バレエダンサーのしなやかで強靭な身体づくりや、機能的な動きをうみだすために大変有効であると考えられます。

バレエを愛するみなさま、さらにもっとバレエを楽しむために、ぜひピラティスエクササイズを取り入れてみてはいかがでしょうか?


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