バレリーナであるがゆえにほしくなるものといえば、甲の高い足ですよね。ポアントで立つためにポコンと前に突き出た甲の高い足、つま先の美しい緊張感を表現する高い甲。そんな甲高の足があれば、トウシューズでのポアントワークはずっと安定するはずだと思います。
でも、現実的に考えて、訓練で甲高にするのには限界がありますし、甲高であればポアントワークが楽々できるようになるというわけでもないのです。トウシューズで安定して立てるようになるには、いくつかの大切なポイントをクリアする必要があります。
ポアントで上手に立てないことを、“足が弱い”と表現される場合がよくありますが、ここでは、その“足が弱い”と言われる人の症状、その原因、解決策としてのエクササイズについて詳しくご紹介します。
トウシューズのお悩み 〜“足が弱い”ってどういうこと?
バレエシューズでは簡単に出来たことが、トウシューズを履くと思うようにできない… あらゆる動きがフラフラしてなんだかぎこちなくて、“わたしって、足が弱いなぁ…”と悩んでいる方、いませんか?
では、“足が弱い”って、どういうことなのでしょうか?下記の項目をチェックして、自分がどのような症状に当てはまるのか、冷静に把握することからはじめましょう。
☑︎ ア・テールからルルヴェ・アップしてポアントに立つのが苦手
☑︎ ポアントからア・テールへ下りる時、ガタン!と踵が落ちてしまう。
☑︎ 動きがギクシャクしている。
⇨ これらの症状に当てはまる方は、下記の“なめらかに立てない、下りられない” という項目をご覧ください。
☑︎ ポアントで立った時、足首がまっすぐに伸びず、やや“く”の字に見える
☑︎ プラットフォーム(つま先で立つ部分)が下(底側)の方ばかり汚れる
☑︎ ポアントで立つと、膝が曲がってしまう
⇨ この3つの症状に当てはまる方は、下記の“甲が伸びない”という項目をご覧ください。
☑︎そもそも、“床を感じる”の意味がわからない
☑︎ 体をコントロールできず、動きが不安定
⇨ この2つの症状に当てはまる方は、下記の“床を感じられない”という項目をご覧ください。
トウシューズのお悩み 〜 “足が弱い”原因
ポアントになったり、ア・テールに下りたりする動きをなめらかに行えない、というのもトウシューズのビギナーに多い悩みです。これは、足裏・足指・足首の力、体を引き上げる力などが弱いため、ソールの固さに負けて、ドゥミ・ポアントを通過できていないのが主な原因です。ドゥミを通れないため、ア・テールからポアントにぴょん!とび乗るのは、動きがギクシャクして見えるだけでなく、バランスを崩しやすくする原因になります。捻挫などのケガにもつながりかねないですし、足裏の筋群が弱いと外反母趾にもつながりかねないので、注意が必要です。
甲がしっかり伸びていないと、まっすぐに立つことができず、ポアントワークもグラグラ…。また、バランスを取ろうとしても膝が曲がり、さらにお尻まで出てしまうことも。
甲が出ない人は、つま先を伸ばすのに、足指をギュッと丸めてしまっていることが多いようです。すべての指をまっすぐに伸ばし、甲のできるだけ上の方(足首に近いところ)を伸ばすように意識しましょう。
☆ 甲の上の方をしっかりと伸ばし、プラットフォーム全面を床につけて立つ
☆ 5本の指をスッと1本に締める感覚でまっすぐに伸ばす
「床を感じる」とは、「自分のつま先と床の接点」を常に意識しておくことです。つま先が、床の上のどこで、どんな動きしているのかを、意識の中で絶えず見張っておくような感覚です。例えば、タンデュなどの動きは、床を感じながら行うことで、よりなめらかになります。また、アレグロのステップなどは、つま先と床の接点を意識することで、重心を正確に移動させ、体をしっかりコントロールすることができます。
初心者の足さばきぐぎこちなくて不安定なのは、床を感じられていないからです。まして、底が固く厚いトウシューズではなおさら難しくなります。まずは素足やバレエシューズで「床を感じる」感覚を体に染み込ませるようにしましょう。そして、シューズに負けない、強く柔らかい足先を作ることが大切です。
トウシューズのお悩み 〜 “足が弱い”を解決するエクササイズ
トウで立つとき、床と接するのは足指の先です。安定したポアント・ワークのために、「足指の力」を鍛えましょう。指の筋肉は足首の上までつながっているため、指を鍛えると足の裏全体も強くなります。また、横のアーチも鍛えられるので、外反母趾の予防にも効果的です。
①タオルを使って
5本の指でタオルをキュッキュッとつかむように足先を動かします。片足10回×左右で1セット。慣れてきたらセット数を増やしていきましょう。
☆踵をその場に固定したままでも、「しゃくとり虫」のように、足を前に進めていってもOKです。
②エクササイズバンドを使って
バンドにはいろいろな強度(負荷の強さ)がありますが、ここではできるだけ負荷の軽いものを使いましょう。強い負荷をかけると、動かしやすい“足首”だけを使ってしまい、肝心の指が鍛えられないためです。
1.まず、つま先にバンドをかけます。
☆ バンドは引っ張らずに、たるむか、たるまないかくらいの張り具合で。
2.階段などの段差に踵を当てて、足首を固定。そのままバンドを押すように指を曲げます。片足10回×左右で1セット。慣れたらセット数を増やしていきましょう。
☆段差の高さは土踏まずの少し上くらいまで
3.段差から足を外し、足首はフレックスのまま、指を曲げます。
4.指を曲げたまま、足首を伸ばします。3と4を片足10回×左右で1セット行いましょう。
☆元に戻るときは、足首をまずフレックスにしてから指を伸ばします。
5.つま先にバンドをかけ、指を1本ずつ曲げてバンドを押します。親指〜小指の1往復×左右で1セット。慣れたらセット数を増やしていきましょう。
☆まだ1本ずつ動かさない人は、以下のエクササイズがおすすめです。
・足の指で「グー」「チョキ」「パー」
・両脚で立って指をすべて浮かせ、親指だけを床につけます。反対に、指をすべて床につけて、親指だけを浮かせます。
ポアントでバランスをとるには、指を1本ずつ自由に動かせるのが理想です。たとえば、重心が外側にかかってしまった場合、小指で体を押し戻せないと捻挫してしまいますからね。地味なワークですが、根気よく続けていきましょう。
意識したいのは指先ではなく、トウシューズのリボンが交差する甲の上あたりです。
1.膝を立てて床に座ります。
2.足の裏を床につけたまま、指で床をたぐるようにして、少しずつ膝を伸ばしていきましょう。
3.「膝をこれ以上伸ばしたら、つま先が床から離れる!」というギリギリのところでストップ。その場で足の指をまっすぐに伸ばし、土踏まずを引き上げて、指の腹で床をギュッと押す。そのまま5秒くらいキープしたら、再び足指で床をたぐってさらに膝を伸ばし、指を伸ばして床をギュッ。これを繰り返し、徐々に甲の上の方が伸びていくのを感じられるようにしましょう。
動きをなめらかにするためには、「足の裏でできるだけ長く床に触れていよう!」と意識することが大切です。バーレッスンで第1ポジションで立ったときは、指、指の付け根、踵が床につき、土踏まずが上がっているのを確認しましょう。タンデュで足を出すときには、一気につま先を伸ばすのではなく、足裏全体、指先、つま先と、床に触れている部分が少なくなっていくのを感じられるようにしましょう。
ここでは、ボールを使ったエクササイズをご紹介します。
1.膝を立てて床に座り、足の指先でボールをしっかりと押さえます。
2.指でボールを押さえたまま、ゆっくりと前に転がしていき、足首と膝を完全に伸ばしきります。1と2を数回繰り返しましょう。
“足が弱い”というトウシューズのお悩みは、これらのエクササイズを根気よく続けて足裏や足指を強化し、“床を感じる”意識をもつことで、少しずつ改善されていくでしょう。これらのエクササイズはお家でも簡単にできますから、みなさまぜひ実践してみてくださいね!
なお、この記事は、「クララ・クロワゼ編 トウシューズ パーフェクト・ブック」を参考にしております。
トウシューズ・パーフェクト・ブック [ Clara編集部 ]
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