バレエの人気ヴァリエーションを動画で比較 〜『コッペリア』編


ここでは、バレエ『コッペリア』のヴァリエーションを動画で比較してみました。取り上げるヴァリエーションは、「第3幕スワニルダのウェディングヴァリエーション」「第3幕スワニルダの祈りのヴァリエーション」「第3幕 曙のヴァリエーション」「第1幕 スワニルダのヴァリエーション」です。

同じヴァリエーションでも、踊り手が違うと、まるで違う作品かのように見えてきます。そして、全ての動画を見比べている内に、そのヴァリエーションを踊るために必要な技術、また、各ダンサーが大切にしようとしている表現のこだわりが見えてきて、とてもおもしろいです。

あなたはどのヴァリエーションが好きですか?どのような雰囲気で踊りたいですか?ぜひ、各ダンサーの多様な表現を見比べてみてください。

バレエ『コッペリア』のヴァリエーションを動画で比較 〜第3幕 スワニルダのウェディングヴァリエーション

第3幕スワニルダのウェディングヴァリエーションは、中盤のイタリアンフェッテから、後半のマネージュ&シェネが大きな見どころになっていますね。とてもハイレベルなヴァリエーションです。

吉田都

:東京都出身。日本が世界に誇るプリマ・バレリーナ。英国ロイヤル・バレエのプリンシパルとして長く活躍し、現在は日本を拠点にフリーランスとして活動している。彼女のどこまでも精確な動きは透明感に溢れ、澄んだ水の流れを思わせる清らかさがある。強靭なテクニックに支えられながらも決してこれ見よがしな派手さのないその踊りは、すべての瞬間が調和に満ちており、温かさ、優しさを舞台に漂わせる。

彼女が17歳の時の映像。一つ一つのパがとても丁寧に踊られています。はじまりから動画の1分ぐらいまでの前半は、グランジュッテを8回繰り返しますが、跳んでいる時の姿勢がとても美しいですね。。膝が綺麗に伸びていることは基本なのですが、ジュッテの軌跡がなだらかな弧を描きつつ、空中での胴体軸がまっすぐに天に向かう様に保持されていること、ジュッテがふわっとしていて、飛んでいる時間が長いと見栄えがします。滞空時間を長くみせるには、ジュッテの最高点から降りるときに腕のラインを少し上げ、キープする意識を持つこと長く跳んでいるように見せる効果があるようです。でも大袈裟に腕を挙げたら妙に見えますし、ジャンプのタイミングを合わなくなる可能性がありますから高さや自分で一番美しいと感じる角度を研究するとよいですね。
 

マリア・アレクサンドロワ

:スケールの大きな踊りと圧倒的な華やかさをもつアレクサンドロワは、2004年よりボリショイバレエ団のプリンシパルとなり、日本でもたちまち観客の心をつかみ人気を博しています。

彼女が16歳の時の映像。少し映像が見づらくなっていますが、とにかく、抜かりなく決めどころをしっかり決めてきているのがわかりますね。特に終盤、イタリアンフェッテとマネージ&シェネというテクニックの見せ場になっています。イタリアンフェッテの繰り返しの場面では、軸足の移動はなくし、脚を振り上げた瞬間に肩は十分下がり、腕と顔で空間を作って観客に見せること、軸足の膝をまっすぐに床に突き刺すように意識すること、振り上げて回す脚はアンデオールし、足首以下がカマにならないように気をつけること、そして、目線をはっきりとつけることが大切です。映像を見ると、彼女の目線が一切ぶれず、しっかりとスポットが決まっているのが見て取れますね。

 

ディアナ・ヴィシニョーワ

:1976年サンクト=ペテルブルク生まれ。ロシアを代表するスター・バレリーナ。マリインスキー・バレエとアメリカン・バレエ・シアター(ABT)を中心に世界中で活躍している。

 

袖でポーズと表情をしっかりつくっていますね。「つくる」というか「なる」という感じでしょうか。舞台女優のようです。
 吉田都さんやマリーに比べて、とても情感豊かでやや大人っぽい印象を受けます。上半身と顔のつけ方でしょうか。色目を使うような表現をわざとらしくするのは逆効果ですが、彼女の場合、嫌味がなく自然にちょっと大人の「スワニルダ」が表現されているような感じです。表現華やかなにパーント上を向いたかと思えば、肩と顔を近づけ、流し目のような表情で艶っぽい表現をしてみたり。また、このグリーンの衣装が彼女にぴったりで、魅力を引き出していますね。コンクールや発表会では、自分に似合う色、自分の魅力を引き出してくれる色の衣装を選ぶことも大切ですね。
 

リサ・パバーヌ(Lisa Pavane/オーストラリア・バレエ)

 

ナタリア・オシポワ(ロイヤル・バレエ)

:1986年モスクワ生まれ。2010年にボリショイ・バレエプリンシパルに。2013年には英国ロイヤル・バレエへ入団。エネルギーに満ちた踊りで観客を熱狂させる新時代のバレリーナ。軸のぶれない急速回転や男性と同じ高さまで到達する跳躍など、驚異的なテクニックを軽々ときめ、演技力もまた高く評価されている注目のバレリーナです。

少女らしく、明るく元気いっぱいで、太陽の様ですね!
かなりの跳躍と回転のテクニックを誇るオシポワの良さがバッチリ出ています。ジャンプがとっても高く、宙に浮いてどこかへ跳んで行ってしまいそうです。音楽がスローモションの様に、ゆっくりですから、通常はこう言ったテンポで跳躍を繰り返すと跳びきれずに必ず「ドスンッッ」と落ちる瞬間があるものですが(^^;;彼女にはそういう瞬間がなく、そのスローな間を滞空時間として悠々と利用している様な感じです。しかも、跳躍後の着地のバランスが驚異的に良く、1ミリもブレませーん!もう圧巻です。最後はイタリアン・フェッテやマネージュではなく、連続フェアテになっています。ここでも1ミリも軸がブレませーーん!かなり驚異的なテクニックの持ち主だということが見て取れますが、彼女の場合、テクニックがテクニックで終わらず、しっかりと役の「表現」として完成されている点に心を打たれます。
 

 

バレエ『コッペリア』のヴァリエーションを動画で比較 〜第3幕 スワニルダの祈りのヴァリエーション

ユリア・グリベンチコフ(Yulia Grebenshchikov/ボリショイ・バレエ)

 

まるでフランス人形のよう。愛らしくて上品な雰囲気のあるダンサーです。そして足がどこまでも長〜い!冒頭のパンシェが衝撃です。とても細かく繊細な足さばきで、パドブレが宙に浮いているかのような幻想的な印象です。とても静かな踊りで、あまり表情もなく暗い感じになりがちですが、彼女の動きには一つ一つ丁寧に情感が込められているので、動きに隙がなく、観ている側が引き込まれるような世界を創り出しています。ブラボー!!

リサ・ボルト(Lisa Bolte/オーストラリア・バレエカンパニー)

動画なのに、なんだか私はゾクゾクしてしまいました。「空気が動く」というか、「祈りのエネルギーを感じる」というのか・・・。特に、冒頭の慎ましい雰囲気に始まり、アダジオでパンシェを3回繰り返す場面は緊張感マックスですが、渾身の思いを込めた祈りが、丁寧な合掌の手と少し震えながら天高く上げられた足に見事に表現されています。それも、1回ではなく、何度も何度も・・・。必死になって祈るとき、確かに同じフレーズを何度も繰り返し、頭を垂れ、ひたす天に思いを馳せるものですよね。その感じが、パンシェの動き1つで観客に伝わっている。素晴らしい踊りです。

 

バレエ『コッペリア』のヴァリエーションを動画で比較 〜第3幕 曙のヴァリエーション

バレエ『コッペリア』のヴァリエーション、お次は、曙のヴァリエーションを動画で比較してみましょう。このヴァリエーションは、一人で踊る場合もあれば、何人かで踊る場合もあります。オレンジの衣装を着ていることが多いですね。知名度は低いです。

アナスタシア・スタシュケヴィチ(Anastasia Stashkevich/ボリショイ・バレエ)

: 2003年リショイ・バレエ学校を卒業しボリショイ・バレエに入団。

本当に日が昇るように明るいオーラを持ったダンサーです。常に目線が少し上向き(2階席を意識されているのでしょうか)で、上体の使い方が非常に伸びやかです。そして、上体だけではなく、細かい足さばきも、丁寧で確実です。さらに、最後のマネージュも、勢いが弱まることなく最後までダイナミックに表現されています。

 

エカチェリーナ・クリサノワ(Ekaterina Krysanova/ボリショイ・バレエ)

:1985年モスクワ生まれ。2009年にボリショイ・バレエのソリストに昇格。

先のアナスタシアに比べると、冒頭から上体がやや硬い印象を受けます。とても高貴な雰囲気ではあるのですが。アダジオなのでとても緊張感のある場面ではありますが、上体が緊張していることで、足元がぐらついてしまうことがあるので注意ですね。プティ・バットマンの部分が少し曖昧なのも気になります。また「曙」なので、あえて華やかに表現し過ぎずに、抑え気味で徐々に日が昇る雰囲気を表現しようとしていたのかもしれないですが・・・ でもそうすると、最後のマネージュはもう少し高さと勢いがあると良いのかな・・・ なんて思ってしまいました。

 

シェリー・ダイアー(Shelby Dyer/コロラド・バレエ)

:コロラドバレエのソリスト。

こちらも曙のヴァリエーション。チュチュではなく、ふんわりと明るいシフォンドレスで踊られるヴァーションもあります。特に回転系のパが入ると、光の輪が広がるようにスカートがふんわりと広がってとっても綺麗です!そして、感動なのは衣装だけでなく、彼女の柔軟性と跳躍力!グラン・ジュテなんて180度以上開いていますね。観ているお客様から拍手があがっています。股関節の柔らかさはもちろんのこと、背中も相当柔らかいのでしょう。跳躍の最高点で背中がグンと反られているので、より華やかでダイナミックに見えます。加えて細かい足さばきもとても丁寧ですね!繊細さとダイナミクスの両方が揃った魅力的なダンサーだと思います。

 

ダンサー名称不明(キーロフ・バレエ)

 

ヴィアレフ版でのみ踊られるヴァリエーション。お祭り騒ぎのような華やかで明るい踊りです。冒頭のターン還付がとても伸びやかで高い!プリエの質が良くバネがあります。中盤の、アッサンブレ→カエルのジャンプみたいなイタリアン・パドシャ→トリプル・ピルエットの連続技を軽々とこなしていくあたりも魅了されます。また、このダンサーは上体のつけ方がとてもしなやかで美しく、どんなに高難度の技が連続してもそのしなやかさをキープし続け、テクニックがしっかりと表現につながっているところがとても良いですね。

バレエ『コッペリア』のヴァリエーションを動画で比較 〜第1幕 スワニルダのヴァリエーション

 

水谷実喜

:3歳でモダンダンスを始める。2005年 アクリ堀本バレエアカデミーに入所。2009年ローザンヌ国際バレエコンクールを機に、イギリスの名門、イングリッシュナショナルバレエスクールに留学。同校卒業後、2012年 英国バーミンガムロイヤルバレエ団に入団。

体のラインがとても美しく、上体の表情のつけ方がとても明るく華やかな印象です。前半は、緊張からか、一つ一つのポーズがなんとなく流れてしまっていて、もう少し音をたっぷり使っても良いのかなと思いますが、後半にいくほど、落ちついて動きに集中している感じがみえます。テクニックも確かで、最後のピケターンやシェネがとても美しいですね。

 

ハナ・ベッツ(Hannah Bettes/ボストンバレエ)

:2007年にセントラル・フロリダ・バレエスクールに入り訓練を積み、2012年にはロイヤル・バレエスクールへ。2014年にボストン・バレエに入団。

表情豊かで、ちょっとした目の使い方や仕草がとっても魅力的です。情感や情景が浮かんできますね〜。そして、ピケ・アチチュードやアラベスクの体のラインが最高に美しいですね〜 股関節や背中がかなり柔らかのでしょう。続くピルエットも正確に決まっていますね。柔らかいだけでしゃなく、体幹もしっかりとしています。最後のピケターンとシェネは、ぐっと出ている足の甲に魅了されてしまいますね!

 

アルティナイ・アスィルムラートワ(マルセイユ国立バレエ団)

:1961年に旧ソ連・カザフスタンのアルマ・アタで生まれる。ワガノワ・バレエ学校ではインナ・ズブコフスカヤに師事した。バレエ学校を卒業後、1978年にキーロフ・バレエ(現在のマリインスキー・バレエ)に入団し、1982年にプリンシパル・ダンサーに任命された。早くからプティやバランシン振付の西側の作品に出演し、注目を浴びた。活躍は本拠地のマリインスキー・バレエに留まらず、世界中でゲストバレリーナとして出演した。黒髪と黒い瞳の神秘的で繊細な容姿を持ち、日本でも人気が高いバレリーナの一人であった。

ローラン・プティ版コッペリア。プティっぽ〜い と思わせるような、キッチュで可愛いらしい振付ですね!ポアントで床をツンとしたり、オフバランス入ったり、肩のラインを捻るような動き、また、手先をブルブルっと震わせるような動きも特徴的です。最後にフェッテが入りますが、あまりダイナミックなジャンプなどはないので、細かな動きをコミカルに愛らしく表現できることがこの振付では特に大事ですね!

さて、ここまでバレエの『コッペリア』の人気ヴァリエーションを動画で比較してきましたが、いかがでしたか?この記事が、あなたの表現テクニック向上のために少しでもお役に立てたら幸いです。

→ バレエの人気ヴァリエーションを動画で比較〜『白鳥の湖』編はこちらの記事をご覧ください。

→ バレエの人気ヴァリエーションを動画で比較〜『眠れる森の美女』編はこちらの記事をご覧ください。


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